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皇室紛争 [時事]

2月13日、宮内庁の羽毛田信吾(はけた・しんご)長官が、皇太子一家の皇居訪問回数が少ないことに苦言を呈して以来、皇室の雰囲気がどうもおかしい。
これに対し、皇太子は誕生日前の記者会見(2月21日)で「[この問題は]家族のプライベートな事柄ですのでこれ以上立ち入ってお話しするのは差し控えたい」と発言し、沈黙を守った。
天皇皇后が孫の愛子さんともっと会いたいのに、その機会が少なくて「残念だ」と思っているというのは、だれが見ても表向きの理由だろう。
「単に孫にお会いになりたいということではなく、国の問題だ」
と天皇皇后の側近が述べたという話が新聞に載っている。
新聞や週刊誌の記事からしか実際の様子をうかがい知ることはできないが、皇室の場合は一家のコミュニケーション不足を「家族のプライベートな事柄」として済ますわけにはいかないのではないか。
ことはあきらかに皇位継承をめぐる問題にかかわっている。
「週刊新潮」(2月28日号)には、あるジャーナリストの次のような発言が紹介されている。
「もし、さらに関係がこじれた場合、ひょっとすると皇統の移動も、との噂があるのです。今まで常に“私”より“公”の立場を優先してこられた両陛下のことです。そのお気持ちが届かないのであれば、皇位継承順位2位、3位のお二方がいる秋篠宮家に継がせることをお考えになるのは、ある意味、当然でしょう。むろん、皇室典範を一部改正しなければなりませんが……」
現在の皇室典範第2条では、皇長子が皇位の第1継承権をもっている。
そして第3条はこうなっている。
〈皇嗣に、精神若しくは身体の不治の重患があり、又は重大な事故があるときは、皇室会議の議により、前条に定める順序に従つて、皇位継承の順序を変えることができる〉
人柄のよい現在の皇太子がこの「第3条」に該当するとは、とても思えない。
だから、皇太子から皇位継承権を剥奪するには、皇室典範を「改正」しなければならないのだが、はたしてそんなことが現実問題としてありうるのだろうか。



それでも天皇と皇太子のあいだにすきま風が吹いていることは事実である。
ある新聞記事はいう。
〈東宮(皇太子家)では雅子さまが昨年8月の終戦記念日に子供会を開いたり、今年の新年祝賀の儀を途中欠席した後、両親の小和田夫妻と東宮御所で食事をされたりしたことがあった。陛下は終戦記念日や原爆記念日などを「4つの忘れてはならない日」として特に大切にされている。ある関係者は「この2つの出来事で東宮へのご不信は決定的になった」と指摘する〉
この記事からは、天皇の怒りとともに、皇太子がいまだ病癒えぬ雅子さんをたいせつにしている様子が浮かび上がる。
家父長たる天皇の意向をさしおいても、自分の家族を優先しようという思いがほのみえる。
「私」より「公」を優先する天皇夫妻が、こうした皇太子一家の姿勢を歯がゆく思うのは当然だろう。
とくに民間出身という経歴に由来する自己規律からみても、皇后の方がより心配を募らせていることはまちがいない。
そして、これは邪推かもしれないが、皇太子一家が時折「私」を見せるのは、挫折したもう一つの皇室典範改正問題がからんでいるかもしれないと思ったりもする。
秋篠宮家に男子が誕生する直前、小泉内閣は女性天皇を容認する皇室典範改正に踏み込むところだった。
しかし、それが立ち消えとなったいま、愛子さんが皇位を継ぐ可能性はほとんどなく、そうなれば将来、皇太子は直接の継承者をもたない天皇となるのだ。
「私」を捨てろといっても、その心中は複雑で、寂寞たるものがあるのではないだろうか。
雅子さんは両親にかわいがられて育った、ふつうの頭のいいお嬢さんで、美智子さんが苦労して皇室になじんだようには皇室になじめなかった。
ほんとうの「私」と表向きの「公」の立場とのギャップはあまりに大きく、皇太子妃を演じることに心底疲れてしまったのではないだろうか。

現在の憲法では、天皇は事実上の国家元首という立場に置かれている。
政治権力をもつわけではないが、政治権力を最終的に承認するという意味で政治性を有するし、日本の国家元首として海外の国家元首と応接しなければならない。
さらに震災時の慰問や国体への参加、老人ホーム訪問などをみても、天皇夫妻が全国津々浦々にまつりごとの威光をおよぼしていることは疑う余地がない。
とはいえ無私の国家元首というのは、明治以降、天皇に割り当てられた近代の制度以外の何物でもない。
だから問題は皇室の家庭の事情では済まされず、皇室という国家制度のあり方自体にかかわるのである。
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コメント 1

古井戸

>現在の憲法では、天皇は事実上の国家元首という立場に置かれている。

憲法に元首という規定はないのでこの判断は各種憲法本で様々です。
問題は皇室(内の人びと)に基本的人権がないことです。自発的な退位を認めるべきであるし、憲法第一条などあってなきがとゴキ(政治上は)ものだから天皇がチョットタンマ、20年天皇業中止しマッす、という仕組みを認めればいいのです(だめだ!といっても罰則もないし)。
次の天皇の機略に私は期待しています。

by 古井戸 (2009-09-12 13:10) 

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