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消費増税のあとにくるもの [時事]

オリンピックで国じゅうが盛り上がっているさなかを狙いすましたように、国会で5%の消費増税が決まってしまった。
ちっともうれしくない。
税金が増えて日本経済がよくなるとは、だれも思わないだろう。
それでも、この増税によって、1000兆円(普通国債では700兆円)を超える負債をかかえた国家財政は、少しは改善されるのだろうか。
少し前に野口悠紀雄の『消費増税では財政再建できない』を斜め読みした。
資料190.jpgうろ覚えでしかないのだが、単純計算して、5%増税で国庫には約10兆円の歳入増が見込まれると野口先生は計算していたと思う。
いま日本の歳入構造は異常で、全体の半分近い44兆円が新規国債発行でまかなわれている。
すると増税によって、国債発行が34兆円に減るかというと、さにあらず。
社会保障費、地方交付税、それに国債費(国債に対する利払い)も増えるから、実際は2兆円くらいしか減らない。
しかも10兆円の税収増は2年くらいしか効果を発揮せず、そのあとはいま以上に新規国債を発行しなければならないという。
素人のぼくにはこの計算があっているかどうか、わからない。
しかし、増税がうまくいっても新規国債発行額はさほど減らず、数年で元の木阿弥になってしまうことは理解できる。
しょせんは泥縄。あるいは焼け石に水。
新規国債で国債費をまかなうというのは、タコが自分の足を食っているのと同じだ。
どうやら今回の消費増税は、ほんの序の口で、野口先生によると、消費税を30%くらいにしないと国債発行をゼロにはできないらしい。

新規の国債発行を抑えなくてはならないのは、国の累積負債がそろそろ限度にきているからだ。
日本人の貯蓄総額からみて、あと400兆円くらいはだいじょうぶという考えもあるが、それでもこのまま行けば、長くてもあと10年で財政は破綻する。
財務省はおそらく、消費税20%のシナリオをすでに描いているはずだ。
たぶんヨーロッパがすでに20%だから、できないわけではないと見込んでいるのだろうが、それはとてもしんどい話だ。
だから、もし近々に消費税20%がいやなら、歳出で大きな割合を占める社会保障費をけずるほかないという議論が、またぞろ「改革」の名のもとにでてくるだろう。
野口先生の本も、消費増税では財政再建できないから、社会保障を見直すしかないというのが趣旨である。

社会保障は年金、医療、介護の3本柱から成り立っている。
これを減らすというのは、国ができるだけ福祉政策から手を引いて、福祉は個人の自主努力にまかせるということだ。
自分のめんどうは自分でみろというわけだ。
いや、もっと悪い。
これから国がやろうとしているのは、税金を増やし福祉を減らすことなのだ。
年金は現在、現役世代が高齢世代を支えるという仕組みになっている。
高齢者が増えて、現役が減ってくると、保険料では、とても支えきれなくなる。現在も、足りない分は税金でまかなわれているわけだが、その金額は増えるいっぽうだ。
そこで、野口先生の提案は、年金の支給開始年齢を70歳に引き上げ、しかもすでに支給されている人の年金に課税するか、給付額を削減するというものだ。
医療費についても、野口先生は、日本の医療費は公的部分の比率が高すぎるので、これを縮小すべきだという。
おそらく自由診療を増やすとか、医療費の個人負担を3割から5割にするとかが考えられているのだろう。
すると高齢化社会に見合って、医療分野の内需が拡大するから経済的にもプラスだという。このあたり、ちょっとまゆつばである。
もうひとつ介護についても、現在は介護医療保険でかえって介護サービスの支出が抑えられてしまっているという。だから公的な制度はほどほどにして、もっと介護がビジネスとして発展すれば、おカネのとれる分野になるはずだという。
何だか生きづらい世の中になってきた。
しかし、税金は増えて、福祉は減るというのが、やっぱりこれからの日本社会の現実なのだろう。
覚悟しなければならない。

ところが、それだけではおさまらない。
たとえ財政の収支バランスが改善されたとしても、膨大な国の借金は残っているからだ。これが最後にどうなるかという問題が残る。
永久国債という考え方もある。
しかし、おそらく財務省の戦略は、インフレを誘導して、借金の事実上の減額をはかるというものだ。
チャラにするというわけにもいかないだろうが、毎年3%くらいのインフレになり、それでも国債の利率を上げず、年金の物価スライド制もやめれば、次第に国の借金の額は減っていく。
ハイパーインフレになればなったで、それは仕方がない。
今回の消費増税のあと、国が考えているのは、おそらくそんなシナリオである。
ため息がでてくる。
日本は政治はいうにおよばず、このまま経済システムも人も老朽化していくのだろうか。
いままで栄華をきわめてきたのだから、それもよし。
下り坂なら下り坂で、何とか個々人が対処しなければならないだろう。
その覚悟が必要だ。
でも、これからの希望はやはり若い人たちだろう。
オリンピックを見ると、そんな気もする。
介護ビジネスも先端医療もいいけれど、やはり経済には若々しさがほしい。
経済の再生は、若い人たちが元気に活躍する時代がふたたびやってくるかどうかにかかっている。
オリンピックを見ながら、消費増税の話を聞くと、ついそんな感想をいだいてしまった。

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コメント 2

ktm

我々の借金を若い世代や後の世代に残さないための方策が本当に必要だと思います。 せめて消費税の上乗せ分で本当に若い世代が安心して子育てできる環境を作ってほしいと切に思います。

by ktm (2012-08-12 10:27) 

だいだらぼっち

そのとおりだと思います。ほんとうの再生医療は、子どもを安心してつくれる社会をつくることなのではないでしょうか。
by だいだらぼっち (2012-08-13 06:53) 

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