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眠る本たち その3 [眠る本たち]

本の整理がいっこうに進まない。片付けようとして、眺めているうちに、つい引き込まれてしまうのだ。それをがまんして、また眠る本たちコーナーへ。

(7)幅允孝(はば・よしたか)『本なんて読まなくたっていいのだけれど』2014年、晶文社
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著者の仕事はブックディレクターだという。多くの本を手にとってもらうために、病院や老人ホーム、企業などでライブラリーをつくる仕事をしているとか。本が身近にある生活というのは、とてもいい。最近、ぼくなどは図書館に行くのも、だんだんおっくうになってきた。昔、ためこんだ本を整理して、眠る本たちのコーナーに積み上げるのが、年寄りの日課になっている。〈頭で理解するのではなく、体で感じること。その感触を記念写真のように飾っておくだけでなく、日々の生活に染み込ませること。良い音楽を聴くと、ご飯がおいしくなる。良い本を読むと、眠りが深くなる。なんていうのが結局のところ一番幸せな気がするのだけれど、皆さんはどうだろう?〉

(8)内田樹・鈴木邦男『慨世の遠吠え──強い国になりたい症候群』2015、鹿砦社
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新左翼の内田と新右翼の鈴木は、ともに天皇主義者で、日本の将来を憂いている。天皇主義者といっても国家主義者ではない。独立自尊の個を尊ぶ。非戦ということでも共通している。鈴木は内田に合気道の稽古をつけてもらい、映画『仁義なき戦い』をともに鑑賞する。そんなふうに交流しながら、1年にわたって何度か対談してできあがったのがこの本だ。ふたりとも日本がますますアメリカ寄りになり、アメリカに追従するようになっていることに懸念をいだいている。ふたりとも猛烈な読書家だが、とりわけ鈴木の読書量にはおどろく。ぼくには平岡正明や竹中労、三島由紀夫、吉本隆明についての話が懐かしかった。

(9)柄本明『東京の俳優』(聞き書き小田豊二)2008年、集英社
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柄本明は何となく田舎の出身だというイメージを持たれがちだが、れっきとした東京出身。それも昭和23年(1948)、銀座の木挽町生まれだという。都立王子工業高校を出て、精密機械の商社に就職したが、社長の新年のあいさつを聞いているうちに、いやになって、じきに会社を辞めてしまったという。21歳のことだ。そのころ柄本は早稲田小劇場と出会い、アングラ演劇に傾倒するようになった。残念なことに、ぼくはあのころ演劇とは縁がなかった。いまでは取り返しがつかない。柄本はその後、東京乾電池という劇団をつくり、ベンガルや高田純次らとともに大活躍した。ぼくが知っているのは、映画やテレビの脇役としての柄本明でしかない。でも、とても存在感のあるいい役者だと思う。最近、その芸にはますます磨きがかかっている。これも演劇人として長く歩んだ成果といえるだろう。

(10)マイク・ダッシュ『難破船バタヴィア号の惨劇』(鈴木主税訳)2003年、アスペクト[原著は2002年]
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これもいただいた本だ。申し訳ないことに読んでいない。映画化されたというが、日本でも公開されたのだろうか。訳者あとがきによると、バタヴィア号はオランダ東インド会社の貿易船で、1628年にジャワ島に向け、処女航海に出たが、途中で難破し西オーストラリアの珊瑚礁に乗り上げたという。船長が救助を求めるため、補助艇でジャワ島に向かっているあいだに、珊瑚礁ではイエロニムス・コルネリスという男が権力を握り、100名以上を惨殺する事件を起こしていた。イエロニムスは異端思想の持ち主で、サイコパスだったという。極限状況に置かれた人間がどれほど残酷になれるのか。事件を忠実に再現した恐ろしい実話だ。

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