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眠る本たち その4 [眠る本たち]

これからも読めそうにないのだが、せめてリストだけでも。ひょっとしたら、そのうちまた読む気になることを祈って。

(11)岡並木『舗装と下水道の文化』1985年、論叢社
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「舗装と下水道。文明の尺度といわれるその二つが、東京の砂漠化にひと役買っていないか」と著者は問う。パリやロンドンも取材、舗装と下水道の歴史から都市のありようを考える。

(12)山口文憲『香港 旅の雑学ノート』1979年、ダイヤモンド社
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中国に返還される前の香港だ。著者は1年間、この街で暮らして、香港のすみずみを探索する。香港ではひとシーズンに100万匹近いヘビが食べられるというのは、いまもそうなのだろうか。ヘビのポタージュ「蛇羹」がお勧めだという。

(13)V・サンギ編『天を見てきたエヴェンク人の話──シベリアの伝説と神話』(匹田紀子訳)1992年、北海道新聞社
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シベリアの北方民族の神話を紹介した貴重な本。シベリアにはいまもケレク人、エヴェンク人、ヌガナサン人、マンシ人、ケート人、ナナイ人など多くの北方民族が暮らしている。その神話はアイヌの神話とよく似ている。天地創造や火の話、クマ祭りの話などもおもしろそうだ。

(14)ヒルデ・シュピール『ウィーン 黄金の秋』(別宮貞徳訳)1993年、原書房
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芸術、文学、音楽、哲学、心理学、経済学が猛烈な勢いで花開いた1900年前後のウィーン。この豊穣な時代を再現する。ヨハン・シュトラウス、マーラー、クリムト、ホフマンスタール、ヴィトゲンシュタイン、フロイト、アドラー、ユング、カール・メンガー、シュンペーター、カール・ポランニーなどが活躍したウィーンの輝きの正体はいったい何だったのだろう。

(15)船橋洋一『世界ブリーフィング──同時代の解き方』1995年、新潮社
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1992年から95年にかけて『週刊朝日』に連載した世界情勢についてのエッセイを集めたもの。冷戦後の世界の動きを追っている。いまからふり返ると、あのころはこれから平和な時代がやってくると、つかの間の希望をいだいた時代だった。そのため、記事にもどことなく、ほんわかしたムードがただよう。〈私は、鄧小平のプックリした顔を写真で見るたびにクロワッサンを連想してしまう。鄧小平理論とはクロワッサン路線と命名すべきではないか、と思ってしまう。〉「北方領土問題は残り、南方領土問題は解決した」「真珠湾ではしゃぐ日本の女の子たち」といった記事もある。

(16)岩村忍『東洋史のおもしろさ』1976年、新潮選書
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岩村忍(1905〜88)は東洋史学者で、内陸ユーラシア史や東西交渉史を専攻した。シルクロード・ブームの先駆者としても知られる。陳舜臣は「これまでおもに東アジアの歴史であった『東洋史』を岩村氏は西アジアに結びつけられた」と絶賛している。本書は歴史エッセイと紀行から成り立っている。遊牧民と農耕民のちがい、東南アジアと西南アジアの比較、モンゴル紀行、アフガニスタン調査旅行、それに茶とマルコ・ポーロ、ヘロドトスと司馬遷など、ちょっと読んでみたくなる本だ。シーア派の一派、イスマイリ暗殺教団はアサシンと呼ばれ、恐れられたが、かれらは大麻の一種ハッシッシを吸っていた。アサシンとハッシッシの語源は同じだという。

(17)エーヴ・キュリー『キュリー夫人伝』(川口篤、河盛好蔵、杉捷夫、本田喜代治訳)1988年、白水社
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ラジウムの発見者としてノーベル物理学賞と化学賞を受賞したマリー・キュリー(1867〜1934)の伝記。戦前に訳されたものの改訂版だという。著者のエーヴ・キュリーはマリーの次女。マリーの長女イレーヌも物理学者で、母親と同じくノーベル化学賞を受賞している。〈彼女は女性であった。彼女は被圧迫国民[ポーランド人]のひとりであった。彼女は貧しかった。彼女は美しかった。〉読まれるべき伝記である。捨てられない。

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