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眠る本たち その5 [眠る本たち]

おそらく、もう読めない本たち。
買ったのに(あるいはもらったのに)読めなかった。
時間がなくなってしまった。ひたすら許しを乞う。

(18)コリン・ウィルソン『わが青春わが読書』(柴田元幸監訳)1997年、学習研究社
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『アウトサイダー』などで知られるコリン・ウィルソン(1931-2013)は本の虫だった。そのウィルソンが青年時代に読んだ本を回顧する。シャーロック・ホームズ、ファウスト、プラトン、ショー、エリオット、ジョイス、ヘミングウェイ、ニーチェ、ジェイムズ兄弟、サルトル、ユイスマンス、ゾラ……。〈人はただ認識しさえすればよいのだ──精神の焦点を合わせるという行為が、より深い意味の認識をもたらし、人類の進化への新しいステップのとば口にたつことを可能にしてくれるということを。文学の目的もまさにここにある。〉写真を撮るときのように、精神の焦点を合わせる。読書も同じ。

(19)俵万智『サラダ記念日』1987年、河出書房新社
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大ベストセラーになった俵万智の歌集。古くさいと思われていた歌が、特別のこの瞬間を切り取る道具に変わったことを知ったときの驚き。〈「嫁さんになれよ」だなんてカンチューハイ二本で言ってしまっていいの〉〈愛人でいいのとうたう歌手がいて言ってくれるじゃないのと思う〉〈「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日〉ここにはどんなドラマがくり広げられていたのだろう。ふだんのことばで歌が詠めることを教えてくれた。

(20)ハリソン・E・ソールズベリー『ヒーローの輝く瞬間(とき)』(柴田裕之訳)1995年、NHK出版
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ソールズベリー(1908-93)は気骨のジャーナリストだった。その彼が自分の会った、自分にとってのヒーロー20人を選んで、その人となりをえがいたエッセイ。有名人もそうでない人もいる。だれもが知っている人としては、ロバート・ケネディやソルジェニーツィン、ハルバースタム、マルコムX、劉少奇、フルシチョフ、宋慶齢、サハロフ、エドガー・スノー、劉賓雁、周恩来などがでてくる。有名人、無名人を問わず、だれもが輝く一瞬をもっていた。

(21)グレイグ・ブロード『テクノストレス──コンピュータ革命が人間につきつける代償』(池央耿・高見浩訳)1984年、新潮社
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いまはコンピュータがなければ、世の中、にっちもさっちもいかなくなってしまった時代。しかし、コンピュータ文明によって「われわれ自身と次代の子どもたちは、肉体的、心理的、ならびに社会的に、果たしていかなる変化に見舞われたか」。この本が出されたころは、オフィスにパソコンが導入されたばかりで、ぼくなどもこれをマスターしなければ時代に取り残されるのではないかと恐怖をいだいたものだ。コンピュータは多くのことを可能にしたが、人間から奪い取ったものも大きい。一度、それをじっくりふり返ってみるのもいいのではないか。ちなみに、うちの11歳の孫も、すでにコンピュータ・ゲームのとりこになってしまっている。

(22)陳舜臣『北京の旅』1978年、平凡社
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1970年代の北京は緑豊かな町だった。陳舜臣は「北京には人を酔わせる要素がいろいろありますが、緑のゆたかなこともその一つではないでしょうか」と書いている。緑の東直路では、ラバが車をひいてトコトコ歩いている牧歌的な情景が残っていたという。あのころの北京はいまどこにいってしまったのだろう。日中関係が良好だったあの時代がなつかしい。

(23)アリフィン・ベイ『インドネシアのこころ』(奥源造編訳)1975年、文遊社
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日本人は他国を経済的な観点からしか評価しないきらいがある。著者はいう。〈人々を文化、宗教、さらに非物質的な遺産としての歴史の所産であると認識するよう、日本人にすすめたい。異なった文化を理解し、「異なること」が必ずしも「悪いこと」ではないことをみいだすよう努力してほしいと訴えたい。〉日本をよく知るインドネシアのジャーナリストによるインドネシア紹介の書。あのころ、ぼくはアジアをもっと知りたいと思っていた。

(24)スーザン・ジョージ『なぜ世界の半分が飢えるのか──食糧危機の構造』(小南祐一郎・谷口真里子訳)1987年[初版は1984年]、朝日選書(朝日新聞社)
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第三世界の飢餓は人口過剰や天候異変だけが原因ではない。「飢えは天災ではなく、一種の人災である」。世界の食糧を操り、食糧不足をつくりだしているのは、巨大な多国籍企業なのだ。途上国は従属から脱却すべきだと訴える。

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