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眠る本たち その8 [眠る本たち]

いただいた本は、申し訳ないながら読まないことが多い。
でも、ぱらぱらめくりはじめると、つい引き込まれる。
今回はそんな本をいくつか。

(44)セオドア・ゼルディン『悩む人間の物語』(森内薫訳)1999年、NHK出版
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人は過去に呪縛されている。昔から受け継がれてきた「生き方」に手足を縛られている。人間は生まれながら自由ではなく、不安にさいなまれているのだ、と著者はいう。不安、孤独、憂鬱は人生につきものだ。歴史はそんな物語に満ちている。しかし、ほんの少し勇気があれば、ほんの少し思いやりがあれば、あなたの人生は変わってくる。そして、多くの見方ができるようになること。それが悩みから解放される第一歩だ。

(45)ジェラルド&ロレッタ・ハウスマン『猫たちの神話と伝説』(池田雅之、桃井緑美子訳)2000年、青土社
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「どうやら猫という霊的存在は、一点曇りなく人間の内奥を映し出す光をたたえた鏡のような生き物、神からつかわされた癒しの使者なのかもしれない」と、訳者のひとりは書いている。そのとおりだと思う。「人間の側にいながら、人間にはわかりがたい存在……しかし、猫の側は、人間をゆっくりと観察し、人間のことは何でもわかっているように見える」とも。そんな猫たちの神話と伝説を集めたのがこの本だ。ぼくにとっても、猫のいなくなった生活はさびしい。たまらなくさびしい。

(46)西研『哲学のモノサシ』(川村易[絵])1996年、NHK出版
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哲学する習慣を身につけること。深く根本的に考えること。自分のなかの風通しをよくすること。真実への意欲をもちつづけること。たぶん、こういう習慣を身につければ、生きることはずっと楽しくなる。自分の感受性を受け入れ、自分なりに生きるためのモノサシをつくること。本書は青年向けに書かれた哲学入門書だが、どっこい意外と深いことが書かれている。

(47)ネリー・ブライ『ケネディ家の悪夢──セックスとスキャンダルにまみれた3代の男たち』(桃井健司訳)、1996年、扶桑社
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ここに描かれているのは、ケネディ一家のもう一つの顔である。ギャングと手を結び、セックスにふけり、麻薬の力を借りて快楽をむさぼる。JFKはだれかまわず女に手を出したが、圧巻は世紀のスター、マリリン・モンローだった。さらに「女を共有するのがケネディ家の伝統だった」とも。弟のボビーはモンローと深い仲になり、やがてモンローを振る。そして、狂ったようにモンローは死んでしまう。ケネディ家はスキャンダルまみれだ。ひょっとしてトランプ王国もと思うのは、ぼくだけではあるまい。

(48)仲晃『ケネディはなぜ暗殺されたか』1995年、NHK出版
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1963年11月のケネディ米大統領暗殺事件の真相はいまも明らかになっていない。本書はオズワルド単独犯行説に疑問を投げかけ、ケネディはなぜ暗殺されなければならなかったかという観点から犯人の姿を追う。そこから浮かび上がるのは、資金を出して実行犯たちをあやつった「巨悪」の存在だ。

(49)羽場久浘子『拡大するヨーロッパ──中欧の模索』1998年、岩波書店
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プロローグにはこう書かれている。〈本書は、現在進行中のNATO(北大西洋条約機構)、EU(欧州連合)など「ヨーロッパ」諸機構の拡大の中で、「中欧」がどのような形で「新しいヨーロッパ」に参画しようとしているのか、その中で、少数民族をめぐる民族と国家の再編はどのような形で行われているのか、さらに社会主義体制の崩壊後10年たった旧東欧社会はいかなる方向に進もうとしているのか、などを検討しようというものである。〉中欧というのは、東欧に代わる新しい地理概念だ。それはポーランド、チェコ、スロヴァキア、ハンガリー、クロアチア、スロヴェニアを指している。バルカン諸国は通常、含まれない。中欧の国々の現状はなかなか伝わってこない。もっとこの国々に関心をもってもいいのではないか。

(50)ラッシュ・W・ドージアJr.『人はなぜ「憎む」のか』(桃井緑美子訳)、2003年、河出書房新社
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人間だけがもつ最も危険な感情、それは憎悪だ。いじめや自己嫌悪、戦争はすべて憎悪から発する。人間の感情の暗黒部分ともいえる「憎悪」は、人間関係を閉ざし、社会を傷つけ、生命を破壊し、そしてついに地球をも脅かす。この「心の核兵器」をコントロールする手立てはないのかを探る。人間の感情でいちばん最初にやってくるのが憎悪だ。愛はいちばん最後にやってくる。憎悪とは何か、それをコントロールするにはどうすればよいのか。

(51)滝口俊子『夢との対話──心理分析の現場』2014年、トランスビュー
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〈私は河合隼雄先生に21年間、754回の分析を受けた。そこでは、夢を解釈するのではなく、夢を生きることで、苦しみを乗り越え、たましいの成長が促された。〉ユング派の分析家、河合隼雄のことをぼくはよく知らない。この本は河合隼雄の心理分析が実際にどのようなものであったかを教えてくれる。河合隼雄のこと、もっと知るべきだ。

(52)ジョナサン・ワイナー『フィンチの嘴──ガラパゴスで起きている種の変貌』(樋口広芳・黒沢令子訳)1995年、早川書房
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生物はいまも進化しつづけている。〈ガラパゴスの中央に浮かぶ小さな溶岩の島で、研究者夫妻は生きたフィンチ[アトリ科の鳥]を一匹一匹調べた。そして20年におよぶ調査の末に夫妻が直面したのは驚くべき事実だった。フィンチたちは刻々と変貌を遂げ、ダーウィンの予測をはるかに上回る規模と速度で進化していたのだ。〉1995年ピュリツァー賞受賞作。おもしろそうな本だ。

(53)トーマス・アームストロング『脳の個性を才能にかえる──子どもの発達障害との向き合い方』2013年、NHK出版
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ADHD(注意欠陥多動性障害)や自閉症、ディスレクシア(失読症)、さらには気分障害や不安障害、知的発達の遅れ、統合失調症。こうした問題をかかえた子どもたちは、とかく否定的にみられがちだ。しかし、この子たちは、ほかの人にはない豊かな才能をもっている。その才能を引きだすにはどうすればよいか。脳の個性を認めあい、共生社会を実現するには……。こんな本ももらっていたのだ。これまで読んでいなかったことを反省。

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