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ふたつの書評 [雑記]

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 このひと月、翻訳にかかりきりだった。
 いずれまたゲラがでると忙しくなるかもしれないが、とりあえず終わって、しばらくぼんやり。急ぎの仕事は苦手だし、からだにもよくない。血圧が上がる。
 原稿にして約330枚。そのうち約210枚をひと月で訳した。それ以外は以前に訳してあったものだ。それほど英語ができるわけではないから、翻訳は難行苦行となる。正直いって、もうご勘弁を、という感じになってしまう。
 順調に行けば、本はたぶん来年1月か2月に、朝日新書で発売される予定だ。
 仮にケネス・ルオフ著『ハーバード講義 平成の皇室』とでもしておこうか。
 内容を全6章にわけてみた。

 第1章 明仁天皇の退位をめぐって[ポートランド州立大学講演]
 第2章 遅すぎた退位論議[『世界』2016年11月号]
 第3章 「国民の天皇」の誕生[ハーバード講義Ⅰ]
 第4章 平成の皇室をふり返る[ハーバード講義Ⅱ]
第5章 次代の皇室をめぐって[ハーバード講義Ⅲ]
第6章 宮崎、日本、アジア大陸──1940年と2020年[宮崎講演]

 初版だけでも、何とか売れてほしい。
 ところで、きょうはwebronza(ウェブ論座)の無料書評「神保町の匠」を読んでみた。9月までぼくもメンバーだった、このコーナー。
 読み残しの本がたまってしまって、最近は新刊を読むのがおっくうになり、担当を降ろさせてもらったのだが、それでも、やはりみんなどんな書評をしているのかが気になる。
 きょうは今野哲男さんによる『現代社会はどこに向かうか』(見田宗介著)と、松本裕喜さんによる『文字と組織の世界史』(鈴木薫著)を読ませてもらった。どちらも、とてもおもしろかった。
https://webronza.asahi.com/culture/articles/2018100100004.html
https://webronza.asahi.com/culture/articles/2018100100005.html
じつは、この2冊はすでにぼくも買ってあったのだが、これまで読む時間がなかった。
 それで、まず『現代社会』のほうだが、最初に生物学のロジスティック曲線の話がでてくる。
 一定の環境下に生物種をおくと、最初はゆっくりと増殖し、次に爆発的な増殖期がつづき、最後は安定期にはいる。この経過を曲線で示すと、S字を斜めに伸ばしたようなかたちになる。これがロジスティック曲線だ。
 ただし、これは成功例で、環境資源を過剰に消費し、安定平衡にいたらず、途中で絶滅する種もあるという。
 さて、人類はどこに向かっているのか。絶滅か安定平衡か。
 その曲がり角になったのが1970年代だという。そこからせめぎあいがはじまった。ひとつはなおも高度成長を追求するのか、それとも「安定平衡期」に向けて軟着陸をめざすのか。
 加速に加速を重ねてきた人類は、空虚感にさいなまれるようになった。それでも、先に先にと突っ走れば、あとは絶滅するほかない。それが、どうも著者の見立てのようだ。
 人類はみずから自分の内側を見直さねばならない時期がきているという。
『サピエンス全史』のような本がベストセラーになったのも、そのためだろう。
 創造的破壊をくり返すのではなく、安定平衡に向かって進化するということだろうか。これはじっさいに読んでみないとわからない。
 もうひとつ『世界史』のほうは、文字と組織(政治や宗教)を軸にして、世界史を組み替えようという壮大なこころみだ。
 人類最初の文字はメソポタミアの楔形文字(紀元前3100年)。
 そのあとエジプトの象形文字ヒエログリフ。それがフェニキア文字やアラム文字に発展する。
 ギリシア人が文字をもつようになるのは紀元前8世紀半ばで、フェニキア文字をもとにしている。
 その後、ローマ帝国はギリシア文字をベースにラテン文字を創出する。
 インダス文明は紀元前18世紀ごろ滅亡するが、すでにつくられていたインダス文字は解読されていないという。
 その後、西北インドに進出したアーリア人は、サンスクリットをつづるためにブラフミー文字を発明した。
 中国では紀元前1500年ごろ、殷王朝で甲骨文字がつくられ、紀元前11世紀ごろ、周王朝のもとで、いわゆる漢字となった。その書体を統一したのが秦の始皇帝である。
 アラビア文字がつくられたのは、紀元7世紀、アラビア半島にムハンマドが登場してからだ。
 文字は国家の広がりと深く関係している。
 書評にいう。

〈こうして西欧キリスト教世界の「ラテン文字」、東欧ギリシア正教世界の「ギリシア・キリル文字」、南アジア・東南アジアのヒンドゥー・仏教世界の「梵字」、東アジア儒教・仏教世界の「漢字」、イスラム世界の「アラビア文字」の五大文字世界が定着し、それは現代にも続く世界の枠組みだと著者はみている。
これまで世界史と言えば近代文明の覇者西欧を中心とする世界史であった。著者はこの本で世界の文明・文化の歴史的変遷を「文字世界」というフィルターを通して展望し、西欧中心でない、新たな「世界史」の見取り図を描こうとしたという。〉

 世界史は、こうした五大文字世界の対立と抗争を含む交流関係によってつくられ、いまもそれはつづいている。
 ぼく自身の興味からいえば、こうした世界史の発展に、「商品世界」がどんなふうにかかわっているかということだ。著者はそのことにどうふれているのだろうか。これもじっさいに読んでみないとわからない。

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