SSブログ

70歳で死んだ人 [雑記]

img212.jpg
旧臘、めでたく満で古稀を迎えた。
 このところ70の坂を越えられずに散った友人知己の訃報を聞くことが多くなった。自分もそろそろあぶないかなと思う。
 市の健診で再検査となったので、何かまがごとが起こらねばよいが、と内心、ひやひやしていた。しかし、それもどうやらクリアし、あっというまに誕生日がやってきた。
 実際70歳になってみると、別段、何ということはない。正月がきても、きのうと変わるところもなく、毎日があっという間にすぎていく。
 それでも、この齢になると、やはり死が追いかけてくることを、どこかで意識せざるをえない。めでたく70歳になったので、どんな人が70歳で死んだかを知りたくなった。
 そんなどうでもいいことを教えてくれる便利な本がある。山田風太郎の『人間臨終図巻』だ。
 ぼくのもっているのは徳間文庫の3巻本で、70歳で死んだ人は第2巻の終わり近くにでてくる。
 そのメンバーをざっと並べてみよう。

ピタゴラス(前570頃―前500)
ソクラテス(前469頃―前399)
マルコ・ポーロ(1254−1324)
兼好法師(1283?−1353?)
コペルニクス(1473−1543)
ライプニッツ(1646―1716)
シーボルト(1796−1866)
アンデルセン(1805−1875)
ワーグナー(1813−1883)
水野広徳(1875―1945)
真山青果(1878−1948)
広田弘毅(1878−1948)
宇野浩二(1891−1961)
吉川英治(1892−1962)
高群逸枝(1894−1964)
大宅壮一(1900−1970)
サトウハチロー(1903−1973)
戸村一作(1909−1979)
大平正芳(1910−1980)
オーソン・ウェルズ(1915−1985)

 本書の原本となる単行本は1986年と1987年に2巻で出版されているから、その後も調べれば70歳で死んだ人のリストはもっと広がるはずだ。
 それにしても、そうそうたる人が70歳で亡くなっている。もっとも何歳でも亡くなっても、この本で取りあげられているのはそうそうたる人物にちがいないのだが……。
 しかし、こうやって並べてみると、どの人も身近に思えてくる。というか、年の数だけでも、自分がこういう偉人と肩を並べることができて、すっかりいい気分になってくるから不思議なものだ。
 何といっても山田風太郎(1922−2001)の筆がさえている。この人こそ天才だった。
『人間臨終図巻』は、文庫でもう1巻ある。それを眺めていると、ひょっとしたら自分も80の坂を越えられるかもしれないと、ついほくそえんだりして……。
70歳で亡くなった吉田兼好の『徒然草』にこうあるそうだ。

〈死は前よりしも来らず、かねて後(うしろ)に迫れり。人皆死ある事を知りて、待つことしかも急ならざるに、覚えずして来る。沖の干潟遥かなれども、磯より潮の満つるが如し。〉

 死は前からやってくるのではなく、後ろからとつぜん迫ってくる。いつの間にか潮が満ちるように。兼好さん、さすがにうまい。
 チコちゃんに叱られるかもしれないが、最近は毎日ぼーっと待ってればいいという気分になっている。

nice!(9)  コメント(0) 

nice! 9

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

Facebook コメント