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参院選始末記 [時事]


参院選で自民党が大敗北したにもかかわらず、安倍首相は早々と続投を決めた。
新聞や雑誌から目についた記事を久しぶりに紹介しておきたい。
やはり安倍は責任をとって、やめろという声が圧倒的だ。
それは野党からだけではなく、自民党の中からも上がっている。
〈総理ご自身が、小沢さんを選ぶのか、私を選ぶのかの選挙だ、とおっしゃった。結果、国民は安倍さんを選ばなかった。あの言葉は一体なんだったのか。有権者をなめるな、ということです。国民はよく見ています。……やはり、自ら辞めると言った上で、「私がやりたいことをやってくれる人に後事を託し、自分は一兵卒として全力で支える」と言うべきだった。そうすれば、国民の受け取り方は全く違ったはずです〉
元防衛庁長官の石破茂はそう話す。
開票作業が始まって間もない午後9時30分に、安倍首相は続投を表明した。
〈ペナントレースをやっていて、試合が終わっていないのに監督が続投っておかしいでしょ。監督に責任がないというようなもの〉
そう憤るのは、参院議員に再選された舛添要一だ。
舛添の憤りはさらに爆発する。
〈安倍内閣を「バカ社長にバカ専務」と言った気持ちは全然変わっていません。ボンボンでもなんでも社長に祭り上げるのはいいわけですよ。……だけど、ボンボンのうえに周りの番頭たちも駄目だから駄目なんです。いまやらなければいけないのは、それを替えることに尽きます〉(以上、「週刊文春」から)
しかし、参院で大敗北を喫したからといって、本人がやめると言わなければ、無理やり首相の座から引き下ろすわけにはいかない。
日曜日の「毎日新聞」では、同志社大学教授の浜矩子が、自民党のプリンス、安倍を「ハニカミ王子」ならぬ「ハジカキ王子」と名づけて、きつい皮肉を飛ばしている。
〈ハジカキ王子は「戦後レジームからの脱却」を唱えた。このまま行けば、まさに彼が言った通りになりそうである。自民党一党独裁という戦後レジームから、彼のおかげで日本はようやく本格的に脱却できるかもしれない。歴史的には、それが彼の最大功績だったということになるかもしれない。これぞ本当の人心一新である〉
いっぽう「週刊朝日」でも、細川護煕元首相が久しぶりにインタビューに応じて、「安倍さん、お辞めなさい」と語っている。
〈国民が安倍政治に不信任を突きつけたわけですから、辞任されるのが当然だと思います。政権とは公のもの、国民のものなのですから。後任に適当な人がいないからなどというのは、民意を無視する理由にはなりません。失礼ながら、安倍さんは、政権を担う重さというものを、よくわかっておられないのではないかな〉
安倍首相がいつどういう形でやめるかに焦点が移ってきた。
しかし、細川は最近の民主党の考え方にも不安を覚える、と話している。
〈自民党との違いは、最近ますますわかりにくくなっていますね。ただ、憲法や安全保障については、変なねじれはないほうがいい。私自身の考えは宮沢喜一元首相や後藤田正晴元官房長官とまったく同じで、海外での武力行使などはけっして容認できません。民主党には、そうした一線だけはしっかり守ってもらいたいと思いますが、最近は自民党よりも勇ましい人たちがいます。もう少し穏健な人が増えないと心配ですね〉
民主党が勝ったと喜んでばかりはいられないようだ。
辺見庸は月刊「現代」の「潜思録」に「参院選とBF症候群について」という一文を寄せている。
参院選の前に掲載されたものだが、これを読むと、安倍をやめさせるとか、民主党が自民党に替わって政権をとるとかといった、お祭騒ぎでは片づかない深刻な事態が着々と進行しているような気がしてくる。
BF症候群とは「ボイルド・フロッグ・シンドローム(ゆでガエル症候群)」のことだ。
いきなり熱い湯にカエルを入れると、カエルはあわてて飛び出すが、冷たい水に入れて、徐々に熱していくと、カエルは気がつかないうちに死んでしまうという。
ほんとかうそかはともかく、人は意外と差し迫る危機に気づかないというたとえである。
自民党と公明党は社会保険庁の民営化法案を強行し、年金の「百年安心」をうたって参院選を戦ったが、「これは巧弁というより詭弁である」と、辺見は断言する。
〈おそらく、BF症候群により相当鈍くなったわれわれの皮膚感覚は、この国の実際の“水温”を大いに誤解している。もはや冷水でもぬるま湯でもなく熱湯、しかも沸点に近づいているのではないか。異常な気候変動だけではなく、このところの国家主義、軍備拡大路線、かつてのレッドパージを彷彿させる国による強権的な教育支配、復古主義、「[沖縄戦の記述変更に見られるような]記憶殺し」、史実の塗りかえ、かつてない報道規制……などが水温をいまなおぐいぐい上昇させているのに「ああ、いい湯だな」と喜悦しながら昇天する者とはカエルではなくして、より本質的には、われわれ人間のことなのである〉
辺見はマスコミや民主党を信用するな、と警告を発する。
〈民主党がときに自民党顔負けの改憲政党でもあることは周知の事実。“亜”自民党とでも呼ぶべきこの党の内実は、とりわけ9条改憲の流れに歯止めがかからないのではさほどの意味はない〉
より本質的な問題はこうだ。
〈資本万能と万物の商品化をどこまでも許してしまった人間世界には、温暖化と戦争を阻止できる理性と意思がはたしてまだ残っているのだろうか。子供たちを異常気象と戦争の熱波から守ることができるのか――数十年一日のごとく繰り返される低劣な永田町談義などより、いま、こちらを熟考すべきである〉
ドタバタ騒ぎに目を奪われて、肝心な問題を見落とさないようにという警告である。


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