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安楽寺と常楽寺 [旅]

 8月11日午後。
 北向観音の参道を抜け、腰巻川といういかにも温泉町らしい小さな川を渡って、すこし先に行くと、安楽寺の黒門が見えてきます。その参道の脇には白い蓮の花が咲いていました。
 安楽寺は鎌倉時代末期に建てられたといいます。開山者は、宋に留学して学んだ樵谷惟仙(しょうこくいせん)、二代目は宋から来朝した幼牛恵仁(ようぎゅうえじん)という人で、穏やかななかにも威厳のあるふたりの木像が残されています。
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 ここ別所温泉は標高650メートルだというのに、ものすごく暑い。参道を歩くだけで、汗が吹きだしてきます。安楽寺の本堂は、もともと茅葺きだったのかもしれませんが、いまはそれに黒っぽい現代風のおおいがかぶせられ、雪止めもついています。本堂と庫裡は逆L字型に配置され、変わったかたちの大屋根がこのふたつの建物をつないでいます。といっても、建物全体の印象は屋根がどんとおおいかぶさった素朴な田舎家といった趣です。
 本堂の左手奥の坂をのぼったところに国宝の八角三重塔が建っていました。この塔は年代測定によると1290年代(鎌倉末期)に建てられたものだといいます。そのころの木造建築がいまも残されているというのは、なかなか貴重です。一見、四重塔のように見えますが、一番下は裳階(もこし)といわれる部分で、こけむしていました。屋根が八角形にピンと張りだしているのが、おしゃれですね。鎌倉時代の建物は、素朴ななかにも、どこか張りつめたようなところがあるのが特徴かもしれません。
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 ここで蕎麦屋に戻って、ようやく蕎麦にありつくことができました。ヨーコさんは定番のもりそば、ぼくは冷やし山菜そばを注文します。ヨーコさんに言わせると、ちょっとゆですぎのようですが、さすがにうまいそばです。
「このあたりは塩田平と呼ばれているようですが、塩と何か関係があったんですかね」。そう店のご主人に聞くと、「さあ、わたしは歴史にあんまり詳しくなくて」と頭をかきながら、感じのよい笑顔で、そういう返事が戻ってきました。北条氏と別所温泉との関係についても、あまり知らないそうです(あとで調べると、塩田平と別所温泉のあたりが「信州の鎌倉」と呼ばれるのは、北条氏の一族が鎌倉時代末期にこのあたりを直接治めていたことと関連があるようです)。
「わたしは隣の青木村の出身で、ここに来たのは去年の12月なもんで」と、言い訳をさせたのは、ちょっと気の毒でした。その代わり、ご主人は青木村にも国宝の三重塔があることを教えてくれました。これも貴重な情報です。
 残念ながら、時間の関係もあって今回は青木村に寄れそうもありません。別所温泉では、そのあと小高い場所にある常楽寺にも寄りました。平安時代、慈覚大師によって創建されたといいますから、古いお寺です。ここは北向観音の本坊でもあります。名僧もでているようです。
 茅葺きの重厚な伽藍は、江戸の享保年間に建てられたもの。奥のうっそうとした杉木立のなかにある石の多宝塔も見ました。その脇には上田繊維専門学校(現信州大学繊維学科)第二次世界大戦学徒出陣戦没者鎮魂之碑が立っていました。戦争が、一見のどかな、この平和な地をへだてなく巻きこんでいたことがわかります。
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 汗だくになり、くたびれもしたので、このあたりで町に戻って、川沿いの大師湯にはいることにしました。入湯料は150円。高校野球の中継をみながら、おじいさんが番台に座っていました。温泉の湯船はタイルばりで、それほど大きくないことに拍子抜けしました。しかし男湯にはだれもおらず、ゆっくり足を伸ばします。かすかに硫黄のにおいがしました。帯状疱疹の後遺症といえる、しつこい顔の痛みもやわらいでいきます。
 3時半に別所温泉を出発。ETCカードが見あたらなくなったので、再度、車のなかや周辺を探しますが、けっきょく見つかりません。いいかげん、あきらめて、帰りはナビどおり、塩田平から上田、小諸の郊外を抜けて中軽井沢へ向かいました。途中、注意散漫で、信号のない交差点で一旦停止をおこたり、ひやりとする場面もありましたが、夕方5時、無事、野鳥の森のなかにある保養所に着きました。
 星野リゾートの駐車場近辺は人があふれていました。保養所について荷物を下ろしてから、念のためにもう一度車のなかを探すと、何と前の座席と座席のあいだにカードがはさまっているのを発見。何かのひょうしにすべり落ちたようです。これで、ひと安心。夜は出されたバーベキューがふたりでは食べきれず、3分の1ほど残して、退散。部屋でテレビを見ていたら、いつのまにか寝ていました。


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