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超訳「万葉集」[11−21] [超訳「万葉集」]

〈第1巻のつづきです〉

[11]
あの人が
仮の宿をつくっている
葺く草が足りなければ
わたしのところにきて
寝ればいいのに
遠い青春の思い出

[12]
見たいと思っていた
野島は見せてくれたのに
阿胡根(あごね)の浦の
海深くにある
珠はいまも拾えないまま

■中大兄(天智天皇)が三つの山を詠んだ歌
[13]
香具山は
畝傍山が
いとしいと
耳梨山と
あい争った
神代のころから
こんなふう
むかしも
そうだったから
いまの世も
人は恋人を
争うのかも

■添え歌
[14]
香具山と
耳梨山が
争ったときは
印南(いなみ)国原[現在の明石近辺の原]が
調停に立ったとか

[15]
海にたなびく
豊かな雲に
入り日が射している
今夜の月が
さやかならいいな

■天智天皇の時代
天皇が内大臣の藤原鎌足に、春秋のどちらがすぐれているかを論じさせたときに、額田王がそれについて判じた歌
[16]
冬ごもりが終わり
春がやってくると
それまで鳴かなかった
鳥もきて鳴く
それまで咲かなかった
花も咲くけれど
山が繁っているので
はいっても行き着かない
草が深いので
取って見ることもできない
それにくらべ
秋の山の
木の葉を見ると
もみじ葉を手に取り
きれいだなと思ったり
青い葉を置いて
いまひとつと思ったり
恋のように少しドキドキ
だからわたしは
秋がすき

■額田王が近江の国に下ったときに、同行した井上王(いのえのおおきみ)の気持ちをくみながらつくった歌
[17]
うま酒の
三輪の山
あおによし
奈良の山
その山際に
隠れるまで
くねくね道が
折り重なるまで
あちこち
見ながら行きましょう
何度も何度も
見はるかす山を
雲が隠したりしないでね
天気に恵まれますように

■添え歌
[18]
三輪山を
どうして
隠すの
雲だって
心あるなら
隠さないでよ

[19]
三輪山を取り巻く
林の向こうの
りっぱな榛(はり)の染料が
衣によく染まるように
あなたのことが
目にしみてなりません

■天皇が滋賀の蒲生(がもう)[近江八幡あたり]の野で狩りをされたときに、額田王がつくった歌
[20]
あかね色に輝く
紫野をゆき
御料地の
標野(しめの)を
戻っていくわたし
野の番人に見られたかしら
あなたが袖をふっているのを
恋のアバンチュールね

■皇太子(のちの天武天皇)の返された歌
[21]
紫草の
においたつような
あなたがいとしいに
きまってる
たとえ人妻になっていても
好きでたまらないのだ
(一座、大爆笑)

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