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ぼくの「いける本・いけない本」(2013年上期) [本]

恒例のアンケートに答えてみました。
去年10月ごろからことし4月ごろまでに出た人文書が対象です。
もとより、たまたま読んでみたというだけで、コメントもきわめて主観的なものです。
こういうアンケートは100人、1000人が集まって、はじめて意味をなすのでしょう。
いつもながら、お手軽な企画です。


いける本・いけない本(2013年上期)

【いける本】
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○柄谷行人『哲学の起源』(岩波書店)
哲学発祥の地イオニアに心を寄せ、「多数者支配」にほかならないアテネのデモクラシーとは異なる「イソノミア」(無支配)の思想を提示する手法はみごとだ。ソクラテスの死の謎、プラトンとの関係も解き明かされる。平和と自由という理念さえ見失われがちないまこそ原点に戻るべきだ。
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○ノーマン・デイヴィス、染谷徹訳『ワルシャワ蜂起1944』(白水社、上下巻)
『ヨーロッパ』『アイルズ』などで知られるイギリスの歴史家が、第二次世界大戦末期ポーランドの知られざる悲劇を描く。アンジェイ・ワイダの『地下水道』で知られていたとはいえ、ヒトラー、スターリンのふたつの全体主義と戦った英雄的な蜂起の全体像がこれではじめて明らかになった。
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○イザベラ・バード、金坂清則訳『完訳 日本奥地紀行』(平凡社東洋文庫、全4巻)
バードは1878年5月から12月まで日本に滞在し、東北、北海道、関西まで回り、明治日本についての貴重な旅行記を残した。これまで、いくつかの訳はあったが、いずれも不十分・不正確なものだった。本書は画期的な決定版。本文約900ページ、635ページにわたる訳注に圧倒される。
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菊地史彦『「幸せ」の戦後史』(トランスビュー)、川西政明『新・日本文壇史』(岩波書店、全10巻)もいい。
【いけない本】
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●髙橋洋一『アベノミクスで日本経済大躍進がやってくる』(講談社)
アベノミクスの実態は、人為的な通貨切り下げによる為替と株価の操作にあるような気がする。もちろん、そうではなくてデフレ脱却が目標だというが、はたして結果はどうなるか。アベノミクス礼賛の本書だけでなく、萱野稔人の『金融緩和の罠』(集英社新書)もあわせて読むと、日本経済の実態が見えてくる。
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●『漂白される社会』(ダイヤモンド社)
一見読みやすいルポと、わかりにくい社会学的考察がひとつにまとまると、ぼくのような単純頭には何が書いてあるのかがよくわからなくなってしまう。「周縁的な存在」「あってはならぬもの」に触れた力作と思えるだけに、残念だ。社会学はむずかしい。
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●『おどろきの中国』(講談社現代新書)橋爪大三郎、大澤真幸、宮台真司
現代中国についての放談。おどろきは、さほど感じられない。むしろ、中国をリスペクトすべきだとか、中国が困っているときに手を差し伸べるべきだという、いまさらながらの結論におどろく。ドン・オーバードーファーの『二つのコリア』に感銘を受けたという言及があるが、いま必要なのは印象論ではなく、冷静に全体像を描く努力かもしれない。

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