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『なぜ北朝鮮は孤立するのか』を読みながら思ったこと [本]

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先軍体制というらしい。
いまの北朝鮮が、みずからをそう称しているという。
平井久志の『なぜ北朝鮮は孤立するのか』を読んで、このことばを知った。
党よりも、そしておそらく民衆よりも軍が先にあるというのだから、スターリンや毛沢東もびっくりだろう。
軍事独裁体制に近い。
金日成の晩年のころから、言い換えれば金正日が次第に権力を掌握するようになり、トップの座についてから、北朝鮮という国はますますおかしくなった。
ソ連が崩壊し、中国が市場経済に走るなかで、この国はかたくなにソ連流の社会主義を守ってきた。経済が疲弊し、ときに300万人といわれる餓死者を出しながら、ひたすら指導者崇拝と軍事統制を強化してきたのだ。
何のために?
共和国とは名ばかりの金王朝を守るためとしかいいようがない。
これは不幸なことだ。
そして、いま最大の話題は、健康に不安のある金正日の後継者と目される金正銀(キム・ジョンウン)がいつ表舞台に登場してくるかというのだから、ほんとうは世間はこの王朝の没落を意地悪く見守っているのだと勘ぐりたくもなる。

〈北朝鮮が体制を維持するには、日米と国交正常化を果たして安全保障を確保した上で、経済支援をてこに、経済の再建をはかることだ。そして、韓国とは南北共存を歩みながら対話と交流を拡大していくしかない〉

著者の平井はそう書いている。
そのためには拉致問題をはじめとして、核、ミサイルの問題を解決しなければならない。
「北朝鮮の核兵器が実際に最も脅威になっているのは日本なのだ」との指摘もある。
日本はほんとうは何をめざすべきなのだろうか。金王朝を倒すことなのか。北朝鮮という国をなくしてしまうことなのか。
おそらくそのどちらもが現実的ではない。金王朝を倒すといっても、まさか日本がアメリカや韓国と一体になって、戦争をしかけるわけにはいかないだろう。北朝鮮という国がなくなることは、少なくとも現時点では、中国がどう出るかも含めて、収拾のつかない事態を招くにちがいないのだから。
朝鮮の南北統一はかなり先の課題である。
となれば、東アジアのなかで、北朝鮮という国を開かれた国へと変えていくしか、現在とるべき道はない。
日朝国交正常化は、北朝鮮にとってだけでなく、日本にとっても目指すべき課題だということを忘れてはならない。
中国の軍事大国化は見過ごしにできないとしても、東アジアの軍事的緊張の原因が主に北朝鮮にあるとしたら、日米同盟の強化もいいけれど、日本は北朝鮮の孤立化をいっぽうで解きほぐす努力をしたほうがいいと思われる。
拉致、ミサイル、核の問題があって、ことはそう簡単ではない。しかし、その場しのぎに走るのではなく、大きな目標を見失ってはならないと思う。
少なくとも、日朝国交正常化を抜きにして、日本の戦後処理は終わらない。
オビにある「『将軍様』亡き後に本当の危機がやってくる」という惹句には、冷笑と野次馬根性しか隠されていないが、本書の伝えるメッセージはもっと真摯で、熱いものだ。


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