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エディンバラの午後──スコットランドの旅(2) [旅]

 2018年8月5日(日)
 昼過ぎ、エディンバラ城を出て、街に下りてきます。
 天気は下り坂。スコットランドでは天候がめまぐるしく変化します。
「地球の歩き方」に出ていたタイ料理屋「タイ・オーキッド」で、カレーや焼きそばを食べました。味はまあまあで、全体的に値段は高め。観光地だから仕方ないか。
 街はフェスティバルでにぎわっています。それにしても国際色豊かです。われわれ日本人、イタリア人のほか、各国から多くの人が集まってきています。観光客だけではなく、近郊に住んでいるインド人やイスラム教徒の人、黒人、中国人も多いようです。
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 いわゆるロイヤル・マイルと呼ばれる通りを下っていきます。大道芸の人がさまざまななパフォーマンスを演じています。伝統的な衣装を着てバグパイプを吹いている人もいます。何かを回している人も。日本からきたパフォーマーもいました。
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 銅像があったので近づいてみると、何とヒュームではありませんか。
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 デイヴィッド・ヒューム(1711〜76)は天才です。12歳でエディンバラ大学に入学し、28歳で代表作『人間本性論』(『人性論』とも)を著しました。デカルトの合理主義を批判し、経験論を唱えました。
 哲学、倫理学、政治学、歴史学におよぶ、かれの膨大な業績は日本ではほんのわずかしか紹介されておらず、翻訳もダイジェスト的なものしかでていません。しかし、その影響はカントやショーペンハウエル、カール・ポパー、さらに現代のドゥルーズにまでおよびます。まさに知の巨人ともいうべき人物。賽銭箱があれば、お賽銭をあげるところでしたが……。
 ついでに、大きな銅像があったので、だれかは知らねど、とりあえずその前で記念写真をとってもらいます。
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 アダム・スミスとまちがえたのですが、ちがう人でした。
 あとで調べてみると、この人は第5代バクルー公爵にして第7代クイーンズベリー公爵のウォルター・スコット(1806〜84)という人でした。作家のウォルター・スコット(1771〜1832)と同じ名前ですが、別人。もちろん親戚関係にあたります。エディンバラのフォース湾に面したリースに港を建設し、スコットランドの貿易発展に寄与した人です。
 聖ジャイルズ大聖堂のなかにはいります。屋根が王冠のかたちをしているのが特徴的です。
 なかの様子を写真にとります。ステンドグラスがすばらしい。しかし、わりあいあっさりした感じです。スコットランドの宗教改革の旗手、ジョン・ノックス(1513〜72)の像がおかれ、小さな美しい礼拝堂もあります。
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 プロテスタントとカトリックの違いがどこにあるのか、ぼくは根本的なところで、実感としてよくわからないのですが、ローマとの関係を断つというところがポイントです。
 カルヴァン派のノックスは、イングランド国教会の支援を受けて、カトリック追放に乗りだしました。スコットランドの貴族は、両派に分裂。
 フランスから戻ってきたメアリー女王(メアリー・ステュアート、1542〜87)は熱心なカトリックでしたが、ついにはプロテスタント勢力によって、スコットランドから追放され、イングランドに亡命したあげく、最後は陰謀罪でエリザベスによって処刑されてしまうのです。
 大聖堂のそばに、ヒュームと向きあうかたちで、もうひとつ銅像が立っていました。これが、お目当てのアダム・スミスの像。記念写真を撮らせてもらいました。
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 アダム・スミス(1723〜90)はいうまでもなく哲学者にして経済学者。『国富論』(『諸国民の富』のほうが正確)の著者として知られます。ヒュームとは終生の友でした。
 像はスミスが晩年住んでいたキャノンゲートのほうを向いて立てられているとか。その先はフォース湾で、対岸にはスミスの生まれたカコーディの町があります。
 スミスは地球儀に手を置いています。地球儀の下はミツバチの巣箱です。
 ミツバチの巣箱は産業の象徴で、マンデヴィルは『蜂の寓話』のなかで、私益の追求こそが公益をもたらすという思想を唱えました。スミスはこの考え方を受け継ぎましたが、同時にヒュームからは同感(感情の同期化)の重要性を学んでいます。
 もう一度、後ろをふり返って、アダム・スミスの像と聖ジャイルズ大聖堂をiPhoneのカメラに収めます。
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 そのあと、少し歩いて、通りから離れたスコットランド国立博物館を訪れました。
 立派な博物館です。入館無料というからおどろきます。財政事情の厳しいイギリスでも、最低限の教育予算は確保されているようです。この日は日曜とあって、多くの家族連れが訪れていました。
 写真をとりそびれたので、ウィキペディアから画像を借ります。
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 博物館の建物は6階建てで、各階ごとに発見、自然、文化、アート、サイエンス、スコットランドの歴史などのコーナーが重層的に展示されています。
 閉館間近だったので、走り抜けるように展示をながめただけで、屋上に上りました。ぼくとしては、肝心の歴史コーナーをみそびれてしまったのが心残りです。
 屋上からはエディンバラの町を見渡すことができました。もう一度エディンバラ城をiPhoneに収めます。エディンバラ大学の建物は反対側にあるはず。
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 そろそろアパートに帰る時間でした。アパートの近くの停留所には4、5本の路線バスが走っています。しかし、適当なバスが見つからず、娘の聟さんに引きずられるまま、延々と歩き回ります。
 つれあいが歩きくたびれてふらふらになったころ、ようやくお目当てのバス停に。
 ふとみるとカモメ(ほんとうはウミネコ)が飛んでいました。やはり海が近いことを実感します。
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 夜はアパートの近くにあいているレストランが見つからず、仕方なくマクドナルドで食事をとりました。期待していなかったチキンバーガーは、けっしてまずくなかった。よく歩いたせいでしょう。

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