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超訳「万葉集」[34─44] [超訳「万葉集」]

〈第1巻のつづきです〉

■紀伊の国にお出でになった川島皇子(かわしまのみこ)[天智天皇の皇子、657-91]のつくられたお歌、あるいは山上憶良[660?-733?]の作とも
[34]
白波寄せる
浜の松
その枝に結ばれた
手向けの幣(ぬさ)は
どれほどの歳月を
へているのだろう
[思うのは、謀反の罪で処刑された有間皇子(ありまのみこ、640-58)のこと]

■紀州の背の山を越えたとき、阿閉皇女(あへのひめみこ)[天智天皇の娘、亡き草壁皇子の妻で、のち元明天皇となる]のつくられた歌[亡き夫への鎮魂歌]
[35]
これだったのだ
大和にあって
わたしが恋い焦がれていた
紀州路にあるという
その名のとおりの
背の山は

■持統天皇が吉野の宮に行幸されたとき、柿本人麿(660-720ごろ)のつくった歌
[36]
あまねく国を治められる
わが大君の
すべられる
天下に
くには
数々あれど
清らかな
山や川に囲まれた
お気に入りの
吉野のくにの
花の散る
秋津の野辺に
宮柱も太く
ご着座されると
あまたの
大宮人が
船をならべ
朝夕
競うように
川を渡り
集まってきます
この川が
絶えることなく
この山が
いつまでも高いように
水のたぎる
滝の都は
何度見ても
見飽きることがありません

■添え歌
[37]
何度見ても
すばらしい
吉野の川が
いつまでも
絶えぬよう
ふりかえり
また見ることです

[38]
あまねく国を治められる
わが大君は
神のように
神々しく
吉野川の
たぎる地に
高殿を
おつくりになり
そこに登られて
国見をされると
重なり合う
青垣の山
それは山の神が
ささげる貢ぎもののよう
山は
春には
花のかんざし
秋には
もみじのかんざし
山に寄り添う
川の神も
みかどの食膳に
仕えようと
上流では
鵜飼いをさせ
下流では
小網をかけさせる
山も川も
こぞって仕えるのは
神の御代だからでしょう

■添え歌
[39]
山も川も
こぞって
仕える
神のごと
たぎる
河内に
船をお出しに

■持統天皇が伊勢の国に行幸されたとき、都に残る柿本人麿のつくった歌
[40]
あみの浦で
船遊びする
おとめらの
かわいい裳裾に
潮が押し寄せる
そんな光景が
目に浮かぶようです

[41]
宮女たちが
手にきれいな腕輪
そんな手節(たふし)の崎で
きょうも大宮人が
玉藻を刈っているのでしょう

[42]
潮騒のする
伊良湖の島べを
漕ぐ船に
あなたは乗って
勇ましく
島めぐりを
しているのかな

■伊勢行幸に従った当麻真人麿(たぎまのまひとまろ)の妻がつくった歌
[43]
いとしい人は
どのあたりを
歩いておられるのでしょう
きょうは
はるか向こうの
目には見えない山を
越えておられるのでしょうか
どうぞご無事で

■のちの右大臣、石上麿(いそのかみまろ)[かぐや姫の話にも登場する]が天皇の行幸に付き従って、つくった歌
[44]
かわいいあの人を
さあ見ようという
いざ見の山[高見山]は
名ばかりで
大和も見えない
それほど遠くまで
やってきたようだ

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